太郎と次郎の危機
1999
木、アクリル、ガラス、ゴム、アクリルボールの中にハムスター2匹
w2000mm h1950mm d2000mm
Crisis of Taro and Jiro
1999
tree, acrylic, glass, rubber, two hamsters in an acrylic ball
w2000mm h1950mm d2000mm
状況の再現、そして象徴、という手法を用い自分の伝えたいことが伝わるような作品にしたいと考え、制作しました。二つの透明なカプセルの中には二匹のハムスターが実際に暮らしています。
このカプセルは、中央の木でできた樽状のものと、パイプでつながっており、そして樽には水が入っています。パイプは実際に水をカプセルに供給しています。簡単に言えば、巨大な給水器付きの、ハムゲージです。当然ながら、給水器の水に毒が入ったり、水がなくなっていたりしたら、ハムスターたちは死にます。
カプセルは私たちの生活、家庭を示しています。樽状のものは、水をたたえたダム、そしてそのダムを守る、木々の象徴として造りました。パイプは私たちの生活を支えてくれる、水道を意味しています。
数万の蛇口からでる水も、元をたどれば数カ所の水源から引かれてきたものです。そのおおもとの水源が、何かによって犯されてしまったら、私たち数万の命は、いったいどうなるのか。わたしたちの暮らしというのは、実は非常に危ういものなのです。
ダム、そして水を蓄える森、を象徴する樽は一部燃えて破壊されています。私たちは蛇口からでる水をみて、水源である山々を想像することはできません。あまりにも便利になりすぎて、水は蛇口からでる、という現象しか認識できなくなってしまったのです。
次郎は約1年半生き、天寿を全うしました。しかし私たちも次郎のように幸運に水を得られ続ける、とは限らないのです。